創業の「かたち」編

更新日:2019年10月01日

(1) どこが違うのでしょう?

   事業は、個人としてでも法人を設立してでも営むことができます。両者の違いを簡単に表すと下表のとおりです。

大まかに言うと、個人の場合は創業の手続や経理の手間が簡単であるというメリットがあり、法人の場合は取引上の信用や税金の面で相対的に有利であるというメリットがあります。

このため、個人と法人のどちらが良いかということは一概には言えません。事業の内容や規模などによります。

 

【個人企業と法人企業の違い】

項目

個人企業

法人企業

創業の手続

比較的容易。提出書類は少なくて済みます。

提出書類が多く、比較的煩雑。法人設立の費用も必要となります

最低資本金

不要。

平成18年5月から最低資本金制度が廃止され、1円でも法人設立が可能になりました。

取引上の信用

取引先や銀行から信用を得るのに、やや不利。

有利な扱いを受けることが少なくありません。相手によっては法人としか取引しないところもあります。

家計と経営の分離

家計と経営とが未分離で、混同しやすい。

家計と経営とを分離しなければなりません。

責任

全責任を負う。

法人企業の出資者は出資の範囲内で責任を負います。ただし、代表者は取引や借入れに際して連帯保証などを求められることが多いので、個人事業と大差ないのが現状です。

経理の手間

青色申告の場合でも簡易帳簿への記帳でよく、決算時には損益計算書を作成するだけで済みます。

複式簿記による記帳が必要で、手間がかかります。決算時には最低でも損益計算書と貸借対照表を作成しなければなりません。

税金

白色申告の場合は、経費に計上できる専従者の給与に上限があります。法人と比べると必要経費が認められにくいと言えます。所得が高額になると法人よりも税金が高くなります。

投資への報酬や退職金は、不当に高くなければ経費に計上できます。必要経費はある程度認められやすく、節税対策もたてやすいと言えます。

 

(2) 会社の形態について   

   会社の形態には、株式会社、合名会社、合資会社および合同会社があります。なお、平成18年5月からは、新たに有限会社を設立することができなくなりました。

  (1) 株式会社  

   会社を設立して事業を始める場合、株式会社を選ぶのが一般的です。その中でも株式譲渡制限会社(非公開会社)を選択すれば、比較的簡易な機関設計を選択することができます。

  ※ 株式譲渡制限会社(非公開会社)とは・・・

   全ての株式の譲渡について、会社の承認を必要とする旨の定めを定款に置いている株式会社のこと。

 

【株式会社の機関設計について】

期間

株式譲渡制限会社

その他の株式会社

株主総会

必ず設置。ただし、取締役会を置かない場合は、決議事項の拡大や運営方法の簡素化が認められます。

必ず設置

取締役

人数

1人以上。ただし、取締役会を置く場合は、3人以上

3人以上

任期

2年。ただし、定款で定めれば10年まで延長可能。

2年

取締役会

任意で設置

必ず設置

監査役

設置

任意で設置

必ず設置

任期

4年。ただし、定款で定めれば10年まで延長可能。

4年

 

このように、株式譲渡制限会社を選択すれば、名目だけの取締役や監査役を置かないことで、報酬コストなどを軽減することができます。

また、創業時に株式譲渡制限会社を選択した場合でも、定款変更を行うことにより、その後の企業の発展段階に応じた様々な機関設計を選択することができます。

(2)合同会社

株式会社、合名会社および合資会社に加え、平成18年5月から合同会社(日本版LLC)が設立できるようになりました。合同会社は、次のような特徴を持っており、創業やジョイントベンチャーなどでの活用が期待されています。

  •  有限責任制
    合名会社や合資会社と違い、社員(出資者)は出資額の範囲までしか責任を負いません。
  •  内部自治原則
    株式会社と違い、利益や権限の配分が出資金額の比率に拘束されません。また、取締役会や監査役のような機関を設置する必要がありません。
  •  社員数
    社員1名のみの合同会社の設立・存続が認められます。
  •  意思決定
    社員の入社、持分の譲渡、会社設立後の定款変更は、原則として社員全員の同意によります。
  •  業務執行
    各社員が原則として業務執行権限を有しますが、定款で一部の社員のみを業務執行社員と定めることも可能です。

 

(3)会社の作り方  

会社の設立に要する期間は、概ね1か月程度みておけばよいでしょう。

設立登記に必要な様式集として、具体的な記入例を示した説明書付きのものが市販されています。これに従って手続を進めれば、ご自分でも会社を作ることができます。

司法書士などの専門家に手続を依頼する場合でも、概ね次のような項目はご自分で決めておく必要があります。

  1. 商号
    商人が営業上自己を表示するために用いる名称で、会社法上、会社は必ずその商号を定め、株式会社、合同会社など会社の種類を明示することが義務付けられています。
    平成18年5月から、同一商号・同一住所の場合を除いて、同区市町村内でも同一の営業のためにその商号と同一または判然区別することができない商号の登記が認められることになりました。これに伴い、類似商号の調査が不要となり、会社設立のコストが軽減できるようになりました。
     
  2. 事業目的
    会社は、定款に定める事業目的の範囲内でしか、活動できないとされています。創業の際には、今後の事業展開をにらみ、事業目的を定めることになりますが、次の点に注意する必要があります。
  • 事業目的は、適法かつ明確でなければなりません。
  • 会社設立後、役所などの許認可が必要な業種の場合、その許認可に係る内容の事業目的が定められていないと許認可を受けることができません。
  • 営業活動を広げる際に、事業目的以外の業務を行うためには、変更の手続が必要になります。当初は予定していない事業でも、将来行う可能性があるものは、付け加えておいたほうが良いでしょう。
  1. その他
  • 本店の住所
  • 出資者名、出資金額
  • 資本金
  • 事業年度
  • 役員

フランチャイズ

フランチャイズチェーン(FC)に加盟することで、様々なメリットが得られます。しかし、反対にデメリットもあります。FC加盟を検討する際は、メリットとデメリットの両方をよく理解することが大切です。そのうえで、FCシステムがご自分の性格に合うか、創業の目的に沿うものなのかをよく考えましょう。

一般的に考えられるメリット、デメリットはおおよそ次のとおりです。

 【メリット】

  • 未経験の分野でも、本部の指導・教育によって創業することができる。
  • チェーンの知名度やイメージを利用できる。
  • 商品、原材料、ソフトなどが安定的に供給される
  • 経理などの事務処理を本部が代行してくれる 。

【デメリット】

  • 独自性を発揮できない。
  • 契約条件が弾力的でない。
  • 長期にわたる契約期間に拘束される 。
  • 本部の営業不振や倒産によって大きなダメージを受ける。

3 販売代理店

現在、様々な商品で販売代理店制度を採用している企業がたくさんあります。販売代理店になるのも創業の一つの選択肢です。

販売代理店制度の場合も、本部があり、そこが扱う商品・サービスを提供するという点では、FCビジネスと同じです。

大きな違いは、経営システム全体を提供するかどうかです。FC本部は、加盟店に商品・サービスを提供するだけではなく、経営ノウハウを指導し、広告宣伝を行うなど、経営システム全体を提供します。

これに対し、代理店本部は、一般的には、単に商品・サービスの販売権を与えるだけで、どのような売り方をするかは代理店に任せています。従って、創業資金はFCよりも安く済みますし、経営の自由度も高いと言えます。しかし、裏を返せば儲かるかどうかはすべて代理店の力量次第だと言えます。

このため、販売代理店制度は販売力に自信がある人に向いていると言えるでしょう。

在宅ビジネス

最近では、パソコンが高性能になり、インターネットなどの通信技術も発達しているので、在宅ビジネスの可能性も広がってきています。  

【メリット】

  • 時間とコストが節約できる。
    自宅=仕事場であれば、通勤時間はまったくかかりません。また、仕事場を借りて家賃を払う必要もありません。
  • 仕事をする時間に柔軟性がある。
    自分が最も働きやすい時間に仕事をすることができます。長時間連続して仕事ができなくても、多少まとまった時間を仕事に充てることができます。

このように、ある程度マイペースで仕事ができることが、在宅ビジネスの最大の魅力であると言えます。

しかし、在宅だからといって仕事そのものが楽になるというわけでは決してありません。むしろ、本来ならば安らぎの空間である家庭に仕事を持ち込むわけですから、在宅ビジネスならではの負担や厳しさがあります。  

【ポイント】

  • 在宅ビジネスでは、自己管理能力が大切
  • 積極的に外部との繋がりを持たなければならない。
  • 営業活動が必要 自分への投資を怠らない。
この記事に関するお問い合わせ先

地域産業振興課 創業・スタートアップ支援係

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